Witching Hour
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雪の季節に飲みたくなるカクテル

いきなりだが「雪国」というカクテルをご存じだろうか。
1958年、寿屋(現:サントリー)主催のカクテルコンクールで第1位(1959年受賞)に輝いたカクテルで、バーテンダーの井山計一さん創作のカクテル。
1958年といえば、売春防止法が施行され、富士重工業(SUBARU)がスバル360を発売し、日清食品が世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売し、朝日麦酒(アサヒビール)が日本初の缶ビールを発売し、東京タワー竣工、こんな出来事があった年。

そんな半世紀以上も前に生まれ、日本だけでなく海外でも今なお愛されるカクテルを味わうべく電車に乗り込んだ…
今回はそんなちょっとマイナー旅をご紹介。

向かう先は山形県は酒田市。
酒田と言えば北前船の航路が確立されたことにより「西の堺、東の酒田」ともいわれたほど栄えた地方都市。後は日本一の地主といわれた本間家や、「おしん」や「おくりびと」のロケ地として使われた山居倉庫とかも有名ですね。
そしてこの旅最大のメイン喫茶&BAR「ケルン」
そう、こちらのケルンこそが、冒頭での雪国を創作されたバーテンダー井山計一氏のお店である。

東京から青春18きっぷを使って、東北本線、奥羽本線、陸羽西線と何度かの乗換と路線を乗り継ぎ18時過ぎ無事に酒田に到着。

さあ楽しい酒田の夜が明ける。

じつは酒田に来たら行きたい酒場が他にもある。
先ずは冷えた身体と空腹を満たすべく、そちらの酒場へ向かう。

久村の酒場(くむらのさかば)
酒屋の隣に居酒屋を開いたのことだが経緯は納得の一言。
酒を買いに来た客が一杯ひっかけて帰るのが通常になり居酒屋を開いた、それが昭和36年と結構古い。しかし驚くなかれ、その酒屋の方はなんと慶応3年から続くという老舗中の老舗なのだ。
店内に入るとコの字型のガラスケースのカウンター。このガラスケースにはおつまみが並び目移りしてしまう。
奥には小上がりがもあり、酒屋の隣に作った酒場と思えないほど広い店内とむしろこっちが本業?
酒田で水揚げされた日本海の魚介はもちろん庄内地域の多彩な食材とそして何より山形の地酒。これぞまさに地元の酒場バンザイである。
某太田和彦さんや某吉田類さんでもご紹介されたことがあり呑兵衛の方々にも有名。

さていよいよメインの喫茶&BAR「ケルン」
お店の作りはBARというより喫茶店の佇まい。
明るめの店内に心地良いBGM…これだけで既に一杯いただいた気分。
カウンターには井山さんと数名のバーテンダー。
肩肘張らずに穏やかに楽しめるお店の雰囲気。東京から青春18きっぷで酒田に酒飲みに来ましたと話すと嬉しそうに「たまにそういうお客様がいらっしゃいますよ」と、たわいもない会話で楽しんだ。
雪国をはじめ数杯のカクテルをいただきお店を後に。

雪深い東北の港町、窓明かりに映る舞い散る雪を眺めながら味わうスノースタイル

これ以上ない素敵な旅となりました。
酒田はまたぜひ訪れたい。

酒田の旅いかがでしょうか。
山居倉庫や本間家旧本邸や本間美術館、また隣の鶴岡市には庄内藩の城下町としてにぎわった歴史風情が今も当時の面影を残しています。世界一のクラゲの展示といわれる鶴岡市立加茂水族館などもあり、観光も多いです。新幹線や飛行機もあるのでぜひ訪れて山形の日本海側を感じてみください。

唯一の心残りがある。
それは…
実は2012年1月にも1度鉄道旅で酒田に訪れている。その時は久村の酒場とケルンは正月休み明け前だったため訪れることが叶わなかったが、その代わり散策中に開いてる居酒屋を見つけふらっと入ったお店がとても素晴らしく酒田の夜を楽しむことができた。しかしここで大きなミスをしていた。帰ってきて写真のデータを確認すると店内の写真はあるが肝心の店名が映っている写真が全く無い。今回酒田を訪れる際、こちらのお店も伺いたかったのだが、結局見つけることは出来なかった。
もし、これを読んでこちらのお店が分かる方がおられましたら、お手数をお掛けしますがお問合せフォームからでも教えていただけるとありがたい。


最後におことわり
こちらの内容は2019年12月に伺った内容になります。
ケルンの井山計一さんは2021年5月にお亡くなりになりました。
享年95歳。ご冥福をお祈りいたします。
もし井山計一さんについてご興味がございましたら、井山計一さんの半生を描いたドキュメンタリー映画「YUKIGUNI」がございますので、ご覧になってみてください。


久村の酒場(食べログ)

喫茶&BAR ケルン (食べログ)

WITCHING HOUR MASTER | グラフィックデザイナー | Tokyo, Japan