Witching Hour
散策,  

昭和の歴史が刻まれている食堂

民生食堂

この言葉をご存じだろうか。
正確には東京都指定民生食堂といい、低所得者であって常時外食するものに対し、低廉で栄養価の高い食事を供食するとともに、災害時における一般都民に対する供食事業を円滑に進めること」を目的とする、とある。
元は戦時下の食糧難から米の配給制、食堂も登録制となり、米の量を記録する米穀通帳が発行され、その通帳を提示して「外食券」を交付してもらい、登録された食堂で食事をしていました。それが戦後徐々に物資供給が安定するようになったことから、外食券制度が廃止となり、この時の外食券食堂が、都に指定されて「民生食堂」となりました。

かつては都内に500軒ほどあった

そう言われている民生食堂だが、現在は数件しか残っておらず、その中の一つが今回取り上げる「下総屋食堂」なのである。

両国国技館の横、旧安田庭園との間の路地にひっそり佇むその食堂、創業はなんと昭和7年(1932年)と老舗の食堂。(後十年で百年食堂の仲間入り)
店内に入ると実に食堂らしいテーブルとイスが並び、目の前にはおかずの陳列棚が飛び込んでくる。そしてその陳列棚の上には「東京都指定民生食堂」のプレートが掲げられている。
システムは至って簡単、陳列棚に並べられたおかずを選ぶだけ。後はご飯や味噌汁を付けるか、おかずをつまみに飲むか、だけである。また、卵焼きや壁に掲げられた短冊のメニューなどは、注文すれば出てくるので遠慮せず発注を。

じつは有名な食堂

さて、この下総屋食堂、実は結構有名なお店で、色んなドラマや映画などで使われており、名前を知らなくても店内を見れば分かる人も多いかと思う。
なのでここで紹介しなくても既に色んなサイトやBlogなどで紹介されているので今更って側面はある…が、やはり取り上げたい。その理由の一つに建物。調べると大正12年(1923年)と100年近くの年季の入った建物。たぶんあちこち老朽化で痛んでいる所も多いだろうし、近年の耐震性なども考えると、そう遠くない時にもしかしら建て替え問題が出てくるかも知れない。そうなると、この歴史が刻まれた老舗食堂ののれんを潜れる残された時間は、そんなに多くはないかも知れない。

WITCHING HOUR MASTER | グラフィックデザイナー | Tokyo, Japan